Tuyo-blog

政治経済・評論

日の丸の意味

 

カンボジアの500リエルには日本国旗「日の丸」が描かれている。カンボジアの観光地ではどこもドルで支払うことができるが、国の通貨はリエル、紙幣とは国の象徴なのになぜ日本の国旗が印刷されているのかと不思議に思った。


カンボジア第二次世界大戦を経てフランスから独立した。しかしその後もベトナムから侵攻され、さらに長い内戦の中で、ポルポト派による二百万人以上ともいわれる自国民虐殺という不幸な歴史を経験した。その後国連が主導し、十九カ国の仲介で停戦になったのが1991年。国連カンボジア暫定統治機構の活動、93年の選挙を経て平和が回復し、ようやく復興が始まった。


日本は戦後復興協力として道路や橋、生活インフラ設備の役割を担った。それに対する感謝の気持ちが、500リエル紙幣の日の丸になったように思う。カンボジアは近年、外国からの投資により9%台の成長を続けている。人件費が安く若年労働力を安定的に確保できるため、日本企業の進出は過去5年で数倍に増えた。中国からの投資は更に顕著で首都のプノンペンや観光都市であるシェムリアップには日本食、中国レストランが何百件もある。


首都のプノンペンには日本のイオンがある。店舗数190店と大型で、オープンから三年半でカンボジア人口1500万人を上回る1700万人の来客があり、買い物客の大半はもちろん現地人だ。「若者は王宮の丘でメコン川を見ながらデートして、イオンに行くのがトレンド」と聞いた。日本の投資は現地で好意的に受け止められ、イオンは既に郊外に二店目を計画中だそうだ。


カンボジアは日本のPKO派遣第一号だ。全土が腐敗した内戦の終結を確認した上で、国連の一員として道路、橋、病院等のインフラを建設し、難民を輸送し、地雷を撤去し、民主的選挙の実施を見届けた。


ただ当時から「国連主導のカンボジア復興協力に日本が何も貢献せず、復興後に日本企業が進出し、アンコールワットが日本の観光客であふれる等、平和の果実だけに預かろうというのは身勝手すぎる」との政府の主張を、国民世論も理解していた。


あの時の日本が「国際責務」として決断し、カンボジア復興を援助した結果、いま、「現地生産→対日輸出」という形で経済面でも日本が利益を受けている側面は否定できない事実だ。500リエルに印刷されている「きずな橋」は両国は相互で繋がっている事を意味し、日の丸も印刷されている。一方、あの時「戦争巻き込まれ論」を唱えた野党第一党は雲散霧消状態で、今その存在を探すのは難しい。500リエルに印刷された日の丸は日本とカンボジアの歴史の象徴でもあるように思う。

 

f:id:nextepisode0401:20180925205300j:image